日本酒の酒蔵で勤務を始めて数か月がたち、少し業務に慣れ始めたころ、上司や先輩から
"声がいい。ききやすく、話が分かりやすい。"
と、いっていただいたり、お客様からも
"接客が丁寧"
と、ほめていただくこともあり、人前に立って説明することに少し自信がつき始めました。
そこで
"人前で英語を使って説明なら、英語を教える仕事もいいかもしれない。それなら、仕事をしながら英語の勉強もできるし、通訳者になるためにはプラスになる"
と思い、某英会話スクールの講師にチャレンジしてみようと思い応募しました。
約1カ月に及んだ選考試験・研修を無事クリアーし、平日は英会話講師をしながら、週末は酒蔵という生活がスタートしました。
この期間の比重は日本酒よりも英会話講師のほうで、どうすればもっといいレッスンを提供でき、生徒様に力をつけていただけるかに注力しました。
一方、日本酒に関しては、週末の仕事という感覚が強くなりました。基礎的な知識は得たつもりでいたので一旦日本酒に対する探求心も落ち着いていました。
そこから一年後のお正月。実家でおせち料理と一緒に一升瓶の日本酒がおいてあるのをみつけました。当時はまだ、日本酒を酒蔵以外で飲む習慣はなかったんですが、お正月気分から、ふと飲んでみようという気分になりました。
すると
"日本酒っておいしい。"
と心から感じ、この日を境に日本酒への関心が再び高まっていきました。
また、この時期あらたにに、英会話の講師職を経験したことから、同じ講師職である日本語教師にもチャレンジすることも決め、酒蔵・英語講師をしながら、日本での就職を目指す外国人留学生が通う専門学校でも働き始めました。
この新しい挑戦がきっかけで、あるフリーランスの日本語教師の方と出会いました。組織に属さず自分自身の力で仕事を作り出していく人にリアルに出会ったのは初めてで、とても刺激を受けました。
そして
"自分もこんなふうにできないかな"
と考えるようになりました。
そこで、再び興味が湧いてきた日本酒と自分の武器である英語に注目しました。
ちょうど訪日外国人がどんどん増えていたのもあり、日本酒を海外の方に紹介するサービスを自分でやってみようと思うようになりました。
ここまでで、英語の集中コースを終えてから、約2年。
あれだけ強かった
"バスケットボールに関わる仕事がしたい"
"バスケットボールの世界で通訳をしてみたい"
という気持ちも気がつけば弱まっていました。
日本酒・英語講師・日本語教師を通じて、いい意味で、バスケットボールに固執しなくなり、自分の中のマインドが広がり、他の世界にも目が向けられるようになってきた、そんな2年間でした。
日本酒を海外の方に紹介するサービスを自分で作りだすためには、まず日本酒の知識をもっと深める必要があったので、日本酒関連のイベントやセミナーに参加することから始めました。
その後、日本酒サービス研究会認定の国際唎酒師という資格を取得し、本格的に海外の方へ日本酒を紹介していくために、日本酒のブログと日本酒専用のツイッターアカウントを開設し、発信をスタートさせました。
また、ただ日本酒を飲んで終わりではなくて、基礎知識だけでも、しかっりわかればもっと日本酒が楽しくなると考え、基礎知識を学びながらテイスティングができる、日本酒のワークショップを考え、外国人観光客に実施したりもしました。
その直後、酒蔵の見学に来ていた日本酒好きのオランダ人カップルと出会いました。
英語で日本酒を説明できるチャンスだと思い、自ら話しかけ酒蔵を案内したところ、すごく喜んでくれ意気投合し、翌日わたしがよく行く日本酒のバーへ行くことになりました。
そこで日本酒を心から楽しむ彼らの姿に感銘を受けました。それと同時に、オランダでは、日本酒を普段飲むことが難しいと残念そうに話すのをきき、なんともいえない気持ちに。
この出会いから
"海外の方に日本酒を紹介したい"
という、それまでぼんやりとしていたコンセプトが
"彼らのように、日本酒に興味があり大好きにもかかわらず、日本に来たときしか楽しめない。
そんな日本酒好きの海外の方が日本に来なくても日常的に日本酒を楽しめるようにしたい"
という、明確なものに変わりました。
そこから、彼らのような境遇にいる海外の人へ向けて
・日本酒と漢字が同時に学べるオリジナルの日本酒ツアーを作成、実施
・SNSでの日本酒の関連情報発信
・日本酒のニュースレター配信
・日本酒と居酒屋の基礎知識を同時に学べる動画セミナー配信
・日本酒の歴史を深堀するセミナー
・自宅にいながら今までの20倍楽しめるようになるというコンセプトの日本酒の書籍作成
こういった活動を通じて約2年間にわたり、様々な国の日本酒好きの人たちと、交流することができました。